勝手に偉人伝

勝利インタビュー

*勝利インタビュー全文掲載*司会者「WEX R-3プラザ阪下90ミニッツを制覇したLJレーシングのタカシ選手に来ていただきました。まずは、今のお気持ちをどうぞ。」タカシ「完走することだけを考えてましたので、1位になれたのはちょっと信じられない。本当に…

沈下橋

数日前までしつこく降った雨で増水した川は、轟々と波しぶきを上げていた。「あの沈下橋で、2人死んだんだよねー。」その重たい内容とは裏腹に、のんびりと間のびした口調で話すレンタルカヌー屋の平さんが指を差した先に、その沈下橋があった。沈下橋とは地…

イタチ

「ぼくええのん見つけたなぁ。」アラタが校庭の片隅で見つけたイタチの死骸を5つ年下の弟に自慢していると、グランドの脇でポプラの木を切っていたおじさんが話しかけてきた。「こんなん好きなんか?」おじさんはアラタが恐る恐る指先でつまみ持っていたイタ…

坂道 episode final

どこまでも続く坂道をトラクターで登りながら僕は呟いた。「あぁまたやっちまった。」昔から勢いだけで行動してしまうのが僕の悪い癖だ。大学4回生のとき、僕には好きな子がいた。Z子はよく通る大きな声で笑い、まるでゆで卵のようにほがらかだった。そんな…

坂道 episode4

病院まで続く坂道をうつむきながら歩く僕の足取りは重かった。季節外れの風邪をこじらせた母が、入院してから早くも一週間が経つ。それにしても憂鬱だ。僕には好きな女の子がいた。同じ塾に通う和美だ。和美は猫っ毛で、笑うと八重歯がニョキっと出て可愛い…

坂道 episode3

まるでコンパスを使って引いたかのような、その屋根の勾配。その美しいフォルムは、これまで不可能と言われてきた、木材のみを使った構造で、ロングスパンの大空間を実現した。 しかも地元の間伐材を使用することで、荒れた山を再生し、地域経済の活性化に一…

坂道 episode2

境内まで続く長い坂道を自転車降りずにどこまで登っていけるか?いつも結果が決まっているので、すぐに諦めてしまう僕は、友達のBの背中を追いかけていることが多い。去年も一昨年もマラソン大会をぶっちぎりで優勝しているBには、まったく追いつけそうも…

坂道 episode1

学校までの長くて急な坂道を自転車降りずにどこまで登っていけるか?いつも結果が決まっているので、こういった勝負事はすぐに諦めてしまうはずの友達のAが、今日は珍しく先導して坂道を登って行く。その背中には何やら気迫が満ちていて、いつものように負…