苦い思い出

「苦い思い出」


初対面の人に「ぼくって双子なんですよー」と言うと、

「双子ってどんな感じなの?」というふうに、

ときどき聞かれることがある。

でも生まれたときから双子だったので、

「どんな感じ?」かと聞かれても自分にとっては

当たり前すぎて全然わからないのです。

高校までずーっと公私(?)ともに双子の兄と一緒にいたので、

珍しいもの見たさからか当時、

ぼくらの周りには色んな人たちが自然に集まってきていた。

「へぇー君が弟さんかぁー」

「やっぱり似てるねー」

と言う人から

「えー?!どっちが本物なん?!」

などと失礼なことを平気で言う人まで、

反応は様々だが、世の中の人たちはおおむね好意的で、

双子への興味が尽きないようだった。

全然、珍しくもない普通のことなのに……。

でもそのおかげでぼくは友達を作るのに苦労しなかった。

あぁそうなのだ。

しなかった……のはいつも一緒にいた高校までだったのだ。



ここから本題の「苦い思い出」に入るのだが……



18年間いつもくっついて遊んでいた二人が、

別々の大学に進むことになった。

18年間つねに最高のライバルでもあったそんな二人が、

初めて離れ離れになったのだ。

しかし当時のぼくに不安はなく、

むしろこれから始まるキャンパスライフへの淡い期待がいっぱいで、

そこまで考えが及ばなかったのだろう……




あれ?

入学してから速攻にそして率直に、ある疑問が生じた。



あ、あれ?

おかしいな?

そうぼくには友達の作り方がまったく判らなかったのだ。

もちろんだれもぼくの周りに人なんて集まってこない。

こんなはずじゃなかった。

悔しくて情けなかった。

しかしもともとが人見知りでシャイなぼくにはどうしようもなかった。

はっきり言ってお手上げだ。

同時に人一倍、ひとりが怖かった。

ひとりでいることは、居心地が悪かった。

とにかく自分を半分失くしてしまったような気分だ。

それからの1〜2年はかなりキツかった。

しかし今となって思えば、ゆっくりじっくりと

「失くした半分の自分」を確認する大事な時期でもあったと思う。

かといって、失くした部分を違う他の何かで埋めてしまったわけではなく、

今でも欠けたままにしてあるのだと思う。

それは、初対面の人と段々打ち解けようとするときには

「ぼくって双子なんですよー」と、

必ず双子ネタを使うという事実からも明らかである。

(こうしてブログの初ネタにも使っている。)



ひとつだけ断っておくと、大学時代に友達ができなかったわけではない。

少ないながらも友達のひとりやふたり(少なっ!)はできましたので…

さぁ涙をふいて!あの頃の俺。