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続ゾクゾクゾク

そのときは突然、やってきた。

その日、授業が終わった僕らは、いつものようにテニスコートにいた。

中体連の試合も終わり、顧問のノノムラ先生が休みのため、

僕ら軟式テニス部の部員は、いつもの役割分担である前衛と後衛を交代して、

勝手におもしろトーナメント戦を繰り広げていた。



そこへ突然、陸上部のハナエさんがやってきたのだ。

ハナエさんは、明るくて活発で細身、

ショートカットがとてもよく似合う

そんなかわい子ちゃんだった。

ハナエさんは、僕ら双子にこう言った。

「なぁトージョー兄弟!!マツダ先生が呼んどるでー。すぐ体育教官室に行きよ!」

え?

体育教官室?

ほんまに?

いつもは明るいハナエさんの顔はどこか暗く、そして青白かった。

その表情が事の深刻さを物語っていた。

完全に気が緩んでいた僕らに、一気に緊張が走る。

マジ?



ハナエさんの後について体育教官室までの道のりの長かったこと。

あれやこれやと考えてみるが、なにひとつ心当たりがない。

しかし体育教官室へ呼び出されるということは、

その結果だけは確定しているも同然だった。

それは

マクドナルドに入った人が、

美味しそうにハンバーガーを頬張りながら出てくるように……

美容室に入った人が、

嬉しそうにパーマをあてて出てくるように……

体育教官室に入った人は、

泣きながら頭をツルツルにされて出てくるのだ。

そう決まっているのだ。



たばこ臭い体育教官室に入った僕らは、

緊張のため声も出ないまま立ち尽くしていた。

振り向いたコワモテの教師たちが4〜5人ワラワラと集まってくる。

「おぉよう来たなぁ」

と、タナカ先生が迎える。

こいつは数学教師のくせに体育教師たちに媚を売りまくって、

今では毎日のように体育教官室に入り浸っている。

典型的なスネ夫タイプで、

教師になって2年目なのに、

校内での態度はとてもデカく、嫌われている。



「おいお前ら!!怒らへんからホンマのこと言えよっ!!」

き、来た……この「怒らへん」なんて絶対に嘘や。

終わりや。

もう何を言っても無駄や。

後ろにいるリーダー格のマツダ先生が、なにやらニヤニヤしている。

こ、こわいっ!そのニヤニヤがこわいっ!

ひょっとして殺される??

背筋が凍りつく。

ゾクゾクゾク



「おいっ!お前ら昨日の4時間目の授業のとき、

入れ替わっとったやろー!!わかっとんやぞー!!」



……へ?

つまりこういうことだ。

僕らは一卵性双生児だ。

もちろんそっくりだ。

その上、僕らの通う中学校の男子は全員丸坊主と決められていて、

僕らのそっくりさったら、

当時の写真を見て自分たちでも見分けがつかないくらいだ。

どうやらその二人が同じ時間帯の授業中に、

ずっとクスクスクスクス笑っていたらしい。

授業が終わり、職員室に帰った片方の授業を受け持っていた先生が、

「今日はなんか知らんけどトージョーがずっと笑っとったわー。」

と何気なく言った言葉に、もう片方を受け持っていた先生が反応。

「え?こっちのトージョーもずっと笑っとったで!?」



先生たちで頭を捻った結果、

「あいつら入れ替わりよったな」

という結論に達したらしい。



んなアホなっ!

ぬれぎぬですやんっ!

双子特有のシンクロですやんっ!!



その後、「ホンマやな?ホンマに入れ替わってないな??」と、

くどくどと何度も念を押されてから、僕らは無事解放された。

体育教官室を出るときも

「絶対にそんなことするなよ!」と、

完全無罪の僕らにとっては、訳のわからない釘まで刺された。



「どうやらこいつらシロやな」

ということを感じ始めたと同時に

「あぁ今日は殴れないのか。」

というシラけた気持ちが、

あのとき体育教官室にいた

教師たち全員に広がっていくのが、

僕らにもヒシヒシと伝わってきたのを鮮明に覚えている。



おしまい

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