イタチ

「ぼくええのん見つけたなぁ。」

アラタが校庭の片隅で見つけたイタチの死骸を5つ年下の弟に自慢していると、グランドの脇でポプラの木を切っていたおじさんが話しかけてきた。

「こんなん好きなんか?」

おじさんはアラタが恐る恐る指先でつまみ持っていたイタチを簡単にひょいと持ち上げたかと思うと、尻尾や口の中を次々と検分し始めた。

「メスやなこれ……どうや?明日おっちゃんと一緒にイタチの毛皮剥いでみるか?」

満面の笑みのおじさんは、思わぬ提案をしてきた。あまりに唐突すぎて、アラタは否とは言えなかった。好奇心旺盛だが、人一倍ナイーブで臆病者なアラタは、もともとがスズメバチの死骸やヘビの抜け殻などを集めるのが大好きだったということもある。

「わはははは。気に入ったぞー。」

ひとしきり動物の皮の剥ぎ方をしゃべったかと思うと、おじさんは坊主頭をつるりと撫で、チェーンソーのエンジンをブルルルンとかけて、再びポプラの木を切ることに没頭してしまった。

「なぁなぁほんまにやるん?」

と、アラタはおじさんに聞いてみたが、まったく聞こえていないようで、その後は一度もアラタを振り返ることはなかった。アラタは、その変わったおじさんを心の中で勝手に「キコリのおじさん」と呼ぶことにした。





さて勢いとはいえ、キコリのおじさんの家へいく約束(しかもイタチの毛皮を剥ぐなんて!)を軽々しくしてしまったことに対し、アラタは激しく後悔していた。しかしアラタの持つ動物の骨や昆虫の死骸のコレクションに、イタチの毛皮を加えられるかもしれないことに、抑え難い魅力を感じたので、アラタは友達の家に行ってくると、お母さんに嘘をついてから家を出てきたのだった。

ポケットには12歳の誕生日にお父さんからもらった「肥後の守」という、たいそう立派な名前のナイフが入っている。昨日のキコリのおじさんとの打合せでは、このナイフを使ってイタチの皮を剥ぐことになっていたが、まだアラタのキコリのおじさんに対する不信感は拭えていなかったため、いざという時にはこのナイフが役に立つかもしれないなと思った。

こないだ夕方のニュース番組で、切り取られた猫の頭だけがアラタの住む町のスーパーマーケットの駐車場に置かれていたと大騒ぎしていた。まさかとは思うが、あのキコリのおじさんがその犯人なのかもしれないのだから……キコリのおじさんの屈託のない笑顔と、その手にぶら下げたチェーンソーを思い出して、アラタは背筋がゾクっとした。

悪い想像ばかりが頭をかすめ、益々後悔を強めたアラタは、汗ばんだ手でポケットの中のナイフを握りしめながら、キコリのおじさんの家を目指して歩いていった……。



******************
























このお話は、ほとんどノンフィクションである。





そう、

アラタは、

僕の息子のアラタのこと。

で……




キコリのおじさん。




彼こそが、

薪割り結社ランバージャックス

を立ち上げ……

後に日本の山々を復活させることになる。



岡本 篤

その人であったー。

どーーーーん!!





※本文中でアラタが想像した岡本氏の人物像については、あくまでアラタの気持ちを汲んだものである。まぁだいたいあってるけどね。

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