モミアゲ
俺がヘアースタイルを丸坊主にしだしてから約6年が経つ。
18年前に酷い目にあってから、理容室に行くのには抵抗があった。かと言って美容室に行くのにもだんだんと面倒臭さが募り、ここんところは自宅で丸刈りにしていたのだ。生まれながらにしてモミアゲの薄い俺にとって、モミアゲはとても大事な存在だ。しかし、田舎町の理容室の店員さんたちには、そんなモミアゲへの熱い思いが伝わらない。(ハイここらへんからしばらく、お得意の偏見が入りまーす。)
だいたい、あいつらときたら客への応対も雑だ。カット中に首の向きを変えるときにも、グイッといきなり向きを変えてくる。
なんなら頭、鷲掴みだ。
そうそう……
「ヒゲはどうなさいますか?」
とは聞いてくれても
「モミアゲはどうなさいますか?」
とは聞いてくれない。
さて、これだけ嫌っていた理容室だが、最近は家でバリカン刈りするのもだんだん面倒くさくなってきた。(どないやねんっ!)なによりも仕上がりが全然違うし、顔剃りとシャンプー付きで、なんとたったの1200円ポッキリの店を見つけたのだ。
まぁ覚悟はしていたが、面倒くさい。
過去のトラウマから、
「モミアゲ残しといてください。」
と言わずにいれないのだ。しかも丸刈り係と顔剃り係とそれぞれ担当が違うので、二人ともに言う必要があるのだ。
「うっとおしいなこいつ。」
と思われてるかもしれないが、言わずに後悔するよりも、言って後悔するほうがマシだ。(←愛されるよりも愛したいマジで……と言うときの力強さで!)
一回の散髪に最低ニ度、
「モミアゲ残しといてください。」
と、言わなければならないということはだね。俺は死ぬまでにあと何回、
「モミアゲ残しといてください。」
と言わなければならないのだろうか?
80歳まで生きるとして(丸坊主はすぐに伸びてくるので)2週間に一度理容室へ行くんだよね。一度の丸刈りに2回言うとするとだね……
52回/年×39年=2,028回!!??
お、俺は死ぬまでにあと2,028回も
「モミアゲ残しといてください。」
と言わなければならないというのか?
ていうか、死ぬまでずっと丸坊主なのか俺っ??
ここまで読んでくださった方の中には、
「そんなの店員さんがすぐに覚えてくれるじゃん?」
とか
「『いつものやつ。』だけで通じるのではないの?」
とお思いの方もおられるかもしれませんが、俺が行ってる理容室には、常時6人以上の店員さんが働いていて、入れ替わり立ち替わり俺に丸刈りを施してくれるのだ。いったいどこの店員さんが俺のような、そこいらによくある平凡な顔を覚えてくれるというのだろうか?ありのままのモミアゲを決して店員さんは受け入れてくれない。(←愛のままにワガママに僕は君だけを傷つけない……と言うときの包容力で!)
今日も仕事帰りに理容室へ行ったのだが、もうひとつ重大な事実に気がつき愕然とした。
「ドライヤーはいいですから。」
と俺は死ぬまでに、あと1,014回も言わなければならないのだ。
丸刈りにしたあとのドライヤーはいらんやろ。
熱いねん。
※18年前に、理容室で酷い目にあったときの詳細についてはこちらへ
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