ダイエット

高校生くらいから結婚するまで、僕の体重はおおむね54〜55キロだった。背丈もないので、その頃の僕は華奢でひ弱な感じだったと思う。学生の頃にやってたスポーツもテニスであり、それはそれは白いポロシャツが似合う青年であった。


あれから約20年が過ぎ、気がついたら僕の体重は68キロ超えを記録してしまった。去年の夏に川遊びに行ったときの水着姿の写真を見て、自分の体つきに愕然としてしまった。普段、オフロードバイクに乗って遊んでいるので、肩や腕はそれなりに筋肉がついているのだが、腰まわりは完全におっさんのそれであり、もっちりしている。完全無防備なぐうたらな生活を送ってきたのだから、仕方がない。



それにしても、あの華奢でひ弱だった青年がオフロードバイクで飛んだり跳ねたり、時には転がったりして遊ぶようになるとは、夢にも思わなかったな。僕は2年前の40歳になるまでバイクになんてまったく興味がなく、まさか自分がバイクのタイヤやマフラーを交換するようになる日がくるなんて、ほんとうに考えられなかった。2年以上前の僕を知る知人からも、「まったくいい歳して、オフロードバイクみたいな危ないこと、やめときなさいよ。」と、たしなめられることが多い。そそっかしい僕は、ときどき自転車や原付バイクで転けて怪我したりしていたのだ。言われなくったって、自覚はある。充分に気をつけているし、だいたいそんなに無茶なことはしていない。この歳になってあまり怪我もしたくないので、合気道を習って上手な身体の使い方も会得している。




合気道ってやつは、まったくもって本当に素晴らしい武術であり、やればやるほど身体がバージョンアップしていくような錯覚を覚える。いやこれは、錯覚なんかじゃない。きっと今の僕の身体は、2年前よりも、いや20年前よりも柔らかく、無駄なく、そして美しく躍動しているのだ。








「今日一日、怒らず、恐れず、悲しまず、正直、親切、愉快に、力と、勇気と、信念とを持って、自己の人生に対する責務を果たし、恒に平和と愛とを失わざる、誠の人間として生きることを厳かに誓います。」(中村天風)




合気道の稽古の冒頭で、僕の師は黙想しながらこう称える。


技の完成度や精通度よりも、呼吸や間合い、つまりは心の有り様に重きをおく僕の師に、稽古をつけてもらっているうちに、気がつくとガチガチだった技や身体も少しずつ、角が取れて、やがてすっかり生まれ変わったかのように感じられるのだ。とても不思議な感覚だ。







それはそうと、これを読んでいる人の中には、オフロードバイクを “ 荒々しい乗り物 ” だと勘違いしている人も多いのではないだろうか?実はオフロードバイクは、繊細な乗り物なのである。もちろん荒々しく乗ろうとしてもいくらでも乗れるのだが、僕がやっているエンデューロやトライアルのバイク競技は、かなり繊細なタッチが要求される。何よりも勢いに任せた雑な乗り方は怪我に繋がるのだ。

その点、合気道とオフロードバイクは、実に相性バッチリで、それぞれの稽古がそれぞれの能力を高めあっているところがあると確信している。つまり、旧知の人々が心配するようなことはないのであって、まったくの杞憂なのだ。

これらの修練で僕は、高い身体性と強い精神力を養う。しかし、ダートライダーとしても武道家としても、僕の体つきはあまりにもだらしなさすぎた。

またバイクのエンデューロレースで120分を走りきる持久力を得るためには、こんな重たい身体では話にならないのだ。



というわけで、僕には本気で痩せなければならない理由ができた。









グッバイぐうたらな僕の身体よ。











さて、2015正月明けには68キロを超えていた僕の体重は、なんやかんや頑張って、この度なんと-10キロの減量に成功したのだ。




















一時は、なかなか60キロの壁が破れなかったんだけど、お菓子と晩酌をやめたら、あっさりクリアーしてし……え?


なに?



左足?



この靴下のこと?



いいでしょこれ。



え?



ち、ちがうってば。



骨折したんじゃないってば。


だから、こういうデザインなんだってば。








そ、そんなことよりもさー。野々村真ってこの頃『世界ふしぎ発見!』でしか見かけませんが、食えてるんでしょうかねー?ひょっとしてバイトとかしてるんですかねー?心配ですよねー?




じゃっ!またねっ!!



















(ふぅ〜。なんとか誤魔化せたな。治ったら、ステアケース(※)もっと練習して、今度は失敗しないようにしなくちゃだわ。くそう。)

※ステアケースとは、バイクでウィリーをして障害物を飛び越えるテクニックのことである。テクニックもいるが、何よりも必要なのは度胸なのである。