グリコ

じゃんけんして勝ったほうが階段を上ることができる遊びがあるじゃないですか?地域によってルールや呼び名は違うのかもしれないけど、私の育った地域では「じゃんけんグリコ」って呼んでたんですよね。あれ、小学生の頃、よく帰り道に歩道橋を使ってやったもんです。賭けるんですよ。負けたひとりが、全員のランドセルを持って帰らなければならなかったりしてね。それって結構盛り上がるんですよ。


それでね。こないだひさしぶりに、あのゲームをやったんです。6歳になる娘と2人で。たまたま目の前に階段があったからね。娘は最近、幼稚園でルールを覚えてきたばかりらしく、すごく楽しそうにしていました。



私、昔から思ってたんですけど、あのゲームってなんかルールがイマイチなんですよね。チョキだと「ちよこれいと」で6歩進め、パーで「ぱいなつぷる」の同じく6歩進めます。で、グーだと「ぐりこ」の3歩しか進めないんですよね。僕がイマイチだと思うのはグーの3歩に対して、チョキとパーが、どっちで勝っても6歩も進めるということ。なんとなく不公平なゲームだなぁと子供心に思ってたんです。で、大人になってからいいことを思いつきました。どうせならパーを「パパイヤ」とかにすればグーで3歩、パーで4歩、チョキで6歩となり、グーの3歩が目立たなくなると思いませんか?


まぁでも、そんなことは別に常日頃から、強く思っていたわけではないので、娘に私が考えた新しいルールを提案することもなく、その日は楽しくやりましたよ「じゃんけんグリコ」をね。でね、昔からの癖で、私はチョキとパーしか出さなかったのですよ。だって、グーで勝ってもうれしくないじゃないですか?進めるのは、たったの3歩ですよ?だから出すのはチョキとパーです。6歩狙いです。子供が相手でも手は抜きません。



「ち・よ・こ・れ・い・と」と娘が進めば、「ぱ・い・な・つ・ぷ・る」と私が進む。前半は結構いい勝負でした。娘ったら、手グセでチョキ出すことが多いんですよね。そういうのって子供ならではの行動で、無邪気でかわいいですよね。でも私はグーなんて出しません。何度も言いますが、グーで勝って3歩だけ進んでもうれしくもなんともないですもん。



驚いたのは、私がチョキを出して負けたときです。つまり、娘がグーを出して勝ったときのこと。そこで、私の身体に衝撃が走りましたね。じゃんけんに勝ってうれしそうに娘が、言い放った言葉はなんと……



























「ぐ・み♡」










ズコーーーッ!!







2歩てっ!
















それにしても2歩だけ進んだときの娘の笑顔の眩しさったらなかったな。私は、それまで自分のとっていた行動を思い出して、すっかり恥ずかしくなってしまったのでした。









グーはグミ。







それがこのごろのルールだそうです。娘がもう少し大きくなったときに、この遊びの不公平さに疑問をもつ日が、きっとくることでしょう。しかし、得てして世の中とはそんなものなのかもしれません。格差社会の影は、こんなところにも忍び寄っていたのでした。


おわり。