ゾクゾクゾク

あれは中学生のころ。

僕の通う学校では、体罰が横行していた。

ビンタ、グーで殴る、髪の毛掴むなどなど……

教師たちはことあるごとに、たいした理由などなくとも

生徒たちをシバいていた。

とても自由にシバいていた。



僕はテニス部だった。

ある日なんてテニスコートのネットにもたれかかっていただけなのに、

ボッコボコにどつかれたことがある。

女の子の見ている目の前だったので、

痛みよりも恥ずかしさのほうが勝っていた。

なんと親が見にきている試合中でも

殴られたことがある。

(試合に負けてどつかれるのは当たり前の風景と化していたのだろうか、

不思議と誰の親もクレームを言わなかった)



そして当時、ヤンキー生徒の間で恐れられていたことがあった。



それは、体育教官室に呼び出されることだった。

体育教官室とは、泣く子も黙る体育教師たちの控え室のことであり、

カンニングや万引き、喫煙など、

度を超えたことをやらかした生徒は

体育教官室に呼び出されたのだ。

うちの中学校の体育教師はほとんどが

まるでヤ◯ザであった。

竹刀を持って校内を巡回する教師なんてのは当たり前。

ある柔道部の顧問の体育教師は、

審判中の試合のジャッジに不服の野次を飛ばした観戦者を

武道館の控え室に連れ込んでボコボコにしていた。

また、ある数学教師(←体育教師じゃないけど体育教官室に出入りしていた)は、

行きすぎた体罰で、ついには生徒を植物人間にしてしまい新聞沙汰になった。

その数学教師に、その同じ手で何度シバかれたことか……考えるとゾッとする。



体育教官室へ呼び出しをくらって、無事に帰れた生徒はいなかった。

顔はアンパンマンよりもパンパンに膨れ上がり、

特典として、もれなく頭はツルッツルの五厘刈りにされる。

五厘刈りとは、髪の長さほぼ1.5mm。

俗に言う青刈りだ。

体育教官室に常備してあるバリカンでザクザクとかなり雑に刈られるのだろう、

頭のところどころには、血が滲んでいる。

その姿は悲惨すぎて、生徒の誰もが目を逸らした。



そして体育教官室から帰った者は、

そこでの出来事をあまり多く語ろうとはしたがらなかった。

彼らは、しばらくしてからやっとポツリポツリと語りだす。

絞り出すようにして……。



あるものは、自分のしたことを深く深く反省し、遠い目をしてこう呟く

「まぁ……悪いのは俺さ。」

またあるものは、

「お、鬼がおったじゃ!あすこは鬼の棲家じゃ!」

と言ったとか?

言わなかったとか?

残念ながらおとなし子ちゃんだった僕は、

そんなところへ呼び出しをうけるようなヤンチャな友達はいなかったので

彼らの感想はあくまで想像でしかない。



あぁ体育教官室。



そこは、まさに未知と恐怖の世界だった。



……が、そんな体育教官室へある日

僕ら双子は呼び出しを受けたのだ!!

なぜ?

このおとなし子ちゃんだった僕らが、

なぜそんな恐ろしい場所へいざなわれなければならないのか?!

ま、ま、まったくわからなかった。

あのときのことを思い出すだけで、背中を冷や汗が流れる。

ゾクゾクゾク



つづく

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