男が丸坊主になる7〜8つの理由

昔から床屋に行くのが苦手だ。

いつも3〜4ヶ月くらい、伸ばしに伸ばしてから、しょうがなしに髪を切りに行く。

なんで好きになれないのだろう……

時間がもったいないと思うのも、その理由のひとつだし、大きな鏡の前に長時間座らされるのも堪え難いことだ。

しかしなによりも、理容室や美容室でのおきまりのスタイルが、苦手である。

まるで縄で縛られて、刃物を首元に押し付けられているような気がしてしょうがないのだ。

床屋


そんな完全不利な状態でまともにコミュニケーションがとれるはずがない………。

い、いや正直に言ってしまおう。

僕は床屋のお兄さん或いはお姉さんとのコミュニケーションが面倒くさいのだ。

もともとが何の共通点もない間柄なんだから、無理してしゃべる必要なんてないのに、あの人たちったら、手を替え品を替え、一生懸命になって話しかけて来る。

それホンマに興味あるの?いやないよね?

と言いたくなるような、どうでもいい質問から、

それ前回も聞かれましたけど?

というようなことまで……。

(答えを聞いている途中で美容師さんも気づいて、あきらかに「しまった。」という顔をしていることもある。)

僕はただ静かに『Goods Press〜男の小道具特集〜』なんかを読んでいる間に、

髪さえ短く整えばそれでいいと思っている。


まだ他にも苦手な理由がある。

【理容室編】

ハタチ過ぎに、北海道で仕事をしていたころのこと、

さびれた漁村のちいさな理容室に行った。

暇そうに新聞を読んでいた店主は(最近そこだけ入れ替えたのだろう)店の奥の一番綺麗な椅子を勧めてきた。

「いらっしゃい。どうしますか?」

僕は伸び切って肩までかかった髪をすっきりさせたかったので、サッパリと短くしてくれるように頼んだ。

そして

「モミアゲは自然な感じで、残しといてください。」

と付け加えた。

はて田舎の理容室で、自然な感じにモミアゲを仕上げられるのか?若干の不安がなかったわけではない。

案の定、終わってみると……

モミアゲは、まるごとそこに残されていた。

ノータッチだ。

さすがにこれはない。

バランスもへったくれもない。

だから、

「やっぱりモミアゲも少し切ってもらえますか?」

と言ったら、今度は根元からごっそり切られた。

サモ



サモハンキンポーか?!

 手加減もへったくれもない。

それから理容室には一度も行ってない。


【美容室編】

美容室の指名のシステムがめんどくさい。

予約の電話をかけると、必ず

「ご指名はありますか?」

と聞かれる。

だれでもいいし、第一名前なんて覚えてもない。

そして「ありません。」と答えているのに、予約した時間に行ってみると、初回に行ったときに髪を切ってくれた子がニコニコしてまっている。

「こんちわ。おひさしぶりです。」だってさ。

それがお店の方針なのか、たまたまなのかわからないが、こうなったら次回から指名してあげないわけにいかなくなる。

へんな気をつかってしまうのだ。

逆の立場で考えたら「指名してくれない」というのは、切なくってしょうがない。

ていうか、そんな無神経なことをした日にゃあ、ますますウカウカと無防備な姿をさらすわけにいかない。

美容師さん同士の嫉妬の渦中に巻き込まれるのだけはゴメンだ(嘘)


ここで白状しておくと、悪いのはあちらばかりでもなく、原因はこちらにもある。

僕は頭の形が悪いので、美容師さんに言わせると、すごくカットがしにくいらしいのだ。

おまけに軟毛で癖っ毛のためビシッとセットも決まりにくい。

新人さんでは手におえず、ある程度、経験値の高い美容師さんでないと扱い切れないのだ。

結果、仕上がりに満足の行くことも少ない。



そして、なんだかんだと面倒くさいので違う美容室へ行くことになり、指名するだのしないのだののくだりを繰り返す……。

ひとつの美容室につき、ひとりの美容師さんしか試すことができないシステム(?)なので、気に入らなければ店をかえるしかないのだ。

最初にいい人に当たることを願い、いわばクジを引くようなもん?

それでもたまに、腕も良くって気も使わないで済む美容師さんに出会えることがあった。



し、しかしだ……

「(遠く離れた)実家の店を継ぐ。」

だとか、

「カナダへ旅立つ。」

だとかで辞めて行ってしまう。

つくづく僕は床屋運がない。



というわけで、丸坊主になった僕は、いろんな面倒くさいことから解放されたのである。