中2男子のトキメキ五寸釘[第一話]
あれは僕がシャイでウブな中2男子のとき。
同じクラスの本橋エリ(仮名)ちゃんに恋をした。
そう、うれしはずかし初恋の思い出なのだ。
エリちゃんとは、なぜだかよく席が隣りになった。
今考えれば、このころに僕はくじ運を使い果たしたのだろう。
それ以降の人生で、くじ引きの類で当たった覚えがまったくと言っていいほどにない。
さてエリちゃんは、すぐに忘れ物をする僕のために、なぜだかよく世話をやいてくれた。
特に美術の授業なんかは、特別に持ってこなくてはならない物が多かった気がするが、デッサンで使う4Bの鉛筆や石膏彫刻で使う五寸釘まで、まるで僕が忘れてくるのを予想していたかのように何も言わずにニコっと手渡してくれた。
また試験中に体調不良の僕が、不覚にも机でモドシてしまったときも、嫌な顔ひとつせずに汚物を片づけてくれ、情けなさで小さくなっている僕に「だいじょうぶ?」と声をかけてくれた。
後日談として分かったことだが、双子の兄も同時期にエリちゃんのことを好きになっていたそうだ。
(基本的に兄とは、好きになる女の子のタイプが真逆なのですが……)
ときどき僕のクラスに遊びにくるフリをして、実はエリちゃんに会いに来ていたらしい。
兄には僕のそぶりから「弟もエリちゃんのことが好きなんやなぁ。」
と感じていたらしい。
そしてなんと「エリちゃんも弟のことが好きなのでは?」
とも感じていたらしい……。
怒涛の最終話につづく