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袋のようなもの

いつも意地ばっかり張ってしまう僕だけど、昨日初めて心の底から素直に、本気で言うことができたんだ……「袋は要りません。」ってね。

そのスーパーマーケットへは、家から一番近いということもあるので、仕事帰りなんかによく行くことがあった。僕はいつもそこで苦い思いをしている。いつもいつもレジでの精算時に、「レジ袋は要りません。」と言ってしまうのだ。ちなみに僕は、いつもいっつも袋のようなものを持ち合わせてはいない。僕はとっても忘れっぽいのだ。「レジ袋はご入用ですか?」とレジ係のおばちゃんに聞かれてから、「しまった。何か持ってくるんだった。」と思いながらも、反射的に「要りません。」と答えてしまっている。ちなみのちなみに僕はケチではない。例えば、いくら中身が同じで、いくら安かろうとも、プライベートブランド商品よりもナショナルブランド商品を買おうとするくらいに、僕はケチではない。そう、そんな礼儀知らずなことは、やってはいけないのだ。

そして僕は、レジ袋ごときに2円を払うのだけは、何かに負けた気がしてとても嫌なのだ。そもそも「エコ」という名の元に行われる取り組みの裏には、胡散臭い臭いがプンプンするではないか。特定の企業や日本なんたらリサイクル協会、延いては政治家たちの利権の臭いがプンプンするのだ。だからそんなことには1円たりとも払いたくない。エコバッグなんて絶対に買わないし、ペットボトルのキャップも集めないし、割り箸を置いてないラーメン屋には行かない決意なのだ。僕はゴミを減らすために、レジ袋を断るのではなく、ごまかしやまやかしにお金を払いたくないから、レジ袋を断るのだ。



話が少しそれたが、そんな僕はいつもレジ袋を断ったあとに、レジを出たところのテーブルに置いてある、ロール式の薄ーいビニール袋に、無理やりビールやお菓子などを詰め込んでからすごすご帰っていくのだ。実はこれはこれで、なんだかちょっと恥ずかしい。周りから見て、何を買ったのか一目瞭然だし、小さなビニール袋に、買ったものを無理やり詰め込むため、チョコパイやエリーゼの箱の角なんかで、薄い袋が破れてしまうこともあるのだ。これはほんとだいぶ恥ずかしい。なのに忘れっぽい僕は、何か袋のようなものを持っていくのを忘れてしまうのだ。こういうときのために車やカバンの中には、レジ袋や小バックをまとめて入れているというのに、それらを店内に持って入るのを忘れてしまうのだ。そして買い物をしているとき、チョコパイやエリーゼを買うと、袋が破れてしまうかもしれないということも忘れてカートに放り込んでしまっているのだ。だって僕は、チョコパイやエリーゼが大好きなのだから。


そして僕は忘れる……人の名前も、観た映画の内容も、自分にとって都合の悪いことも、過去の過ちも、小学校2年生のときに友達から借りたままの『21エモン』第1巻のことも、僕はすっかり忘れてしまっているのだ。いや、『21エモン』のことは、なぜだか奇跡的に覚えてたわ……ごめんよ小川くん。


そんな僕が昨日、初めてレジ袋をあらかじめ準備してから、そのスーパーマーケットへ行った。昨日の昼、子供達にマルタイの棒ラーメンを作ってやるつもりで家を出る寸前、なぜだかふと袋のことを思い出したのだ。僕はマルタイの棒ラーメンもたまらなく好きなのだ。

スーパーマーケットで、ラーメンに入れる具を選びながら、ときどきポケットにそっと手を入れ、指先にその存在を確かめ、僕は軽快に店内を回った。レジのおばちゃんには、いつも意地ばっかり張ってしまう僕だけど、初めて心の底から素直に、そして本気で言うことができた。






「袋は要りません。」






帰り道、ヨレヨレのレジ袋から突き出た白ネギが、誇らしげに袋の中から凛として立ち上がっていた。白ネギは、台所で細く刻まれ、そっとラーメンに添えられた。








ふと窓の外を見ると、僕の住む町に粉雪が舞っていた。













謹賀新年。















……ちょ、ちょっと待て!

よくよく考えてみれば、棒ラーメン、豚バラ肉、白ネギは、別にあの薄いビニール袋だったとしても問題なく入ってたよな。新年早々、何をいい思い出仕立てにしようとしとんねん?





いや白ネギは無理か。なんせ凛としてるからなアイツときたら。








おわり






いや、おわりじゃねーよ。「凛として……」って言いたいだけじゃねーか。



もうええわっ!





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